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◆群雄割拠の時代◆
 今日「薬膳」という言葉を耳にすると、多くの人々は「薬臭い中華料理」と答えて
くれるだろう。
 しかし、薬膳をもっと正確に知っておきたい、と願う人たちも確実に増えつつある
ことは確かである。
 こうした問題を助長するのは当然のことながらマスコミ関連である。

 そのマスコミの多くは、取材先を何処に求めるのか、このあたりの定義が未だ確立
しているとはいえない。何処で調べるのか、恐らくホームページで検索するのであろ
うが、当ANY協会にも時々質問や取材のアドバイスを求める電話などが入ってくるよ
うになった。
 「薬膳」という言葉が入ってきた1980年代。ルーツは中国であることを柱に、日
本国中あちこちの中華料理店で「薬膳」をメニューに取り入れる状況が見られたもの
だ。しかし、薬膳の本質を真剣に学ぶ人は極くまれで、多くの人々は時流に遅れマジ、
千載一遇のチャンス到来とばかり無責任に販売を始めていたものだ。

 一方、中華料理に関係のない人は、「薬膳イコール漢方」の図式を勝手に描き、漢
方薬局や漢方の薬科大学などを訪ねた経緯がある。逆にその質問を受けた人々は、中
医学を勉強した方は少なく、適当に薬膳理論を作りあげた様子が多々伺える。
 中医学だけを絶対のものとは云わないが、日本漢方には「薬膳」の理論を構築して
いない。各人各様に解釈して人々に教えているから、日本漢方の薬膳理論は種々雑多?
である。
 一例を挙げると、「薬膳」とは何か?の質問に対し、「料理に漢方の生薬を入れた
ものが薬膳であって、生薬をいれないものは薬膳風である」なんて言ってのける学者
もいる。また、「生薬をいれない薬膳は家庭薬膳だ」と言い切る人もいる。
 このようにまちまちな意見が飛びかう状況下で「薬膳」を普及するには、是非統一
の取れた理論を早急に作り上げるべきであり、実際に7〜8年前、当時の文部省が
「薬膳」の統一見解を作成すべく5人の学識経験者を集めたが、薬膳を知る学者は難
波教授1人だけであった。暗に違わず1回集まっただけで自然消滅した経緯がある。
                   

◆今や薬膳が本当に必要となった◆ 
 十数年前、マスコミ等を賑わした「薬膳」は、世間の知識も未熟で、興味本位の見
せかけ「薬膳」であった。しかも高額で提供していたことが、いつしか人気も低迷し
てしまった。
 しかし、現在は「薬膳」に対する要望はすっかり変わっている。つまり、現代栄養
学では表現しきれない幅広い角度から分析した、東洋人の為の栄養学であることが理
解されるようになった。
 薬膳は中国4000年の歴史が編み出した栄養学の集大成である。わずか100年余の
現代栄養学とは内容に格段の差がある。もっとも現代栄養学は「科学」を駆使してい
る。特に数字で表現すれば、現代人の多くは絶対的に信用する習癖がそなわっている。
 自然界は数字だけで総てを判断するものでは無い筈だ。

◆薬膳は健康保険財政の破綻を救う力がある◆
 経済成長に向けひた走りに走ってきた日本国民にとって、ファーストフードや偏っ
た単品食で済ませる人々、見せかけのグルメでひと時の悦楽を享受し、自分に備わっ
ている筈の先祖伝来の風習や、本来行うべき習慣はすべて無視してしまう風潮は、正
に日本民族の誇りを失って行くばかりである。
 更に病気になっても健康保険があるから安心、と考えるのは勝手であるが、結果は
医療機関や薬物を乱用する破目に陥った。お陰で保健財政は底をついてしまった。し
かし、「薬膳」の心得を持つ人は「病気にならないように心がけている」。もしも日
本人全員がこの考えに至れば、健康保健財政は一気に黒字転換である。

◆過去の遺産や伝統を粗末にしている現代人◆
 日本の家族制度を見事に崩壊させてしまったアメリカの占領政策。日本人は自ら勝
ち取ったのではなく、あてがわれた民主化が果たせ、自由を得た喜びはあったものの、
失ったものも多く、それが証拠に人々の暮らしの中味は決して豊かになったとはいえ
ない筈だ。否、50年前に比べると絶対豊かな生活をしている筈であるが、現代人は、
それを豊かとは思っていない。つまり心が貧しくなったのだ。
 この状況は食生活においても顕著に示されている。
 例えばテレビ番組は興味本位での角度でしか放送はしない食道楽番組。中でも食べ
放題店舗の紹介などは、食べ物を大切にする思想など微塵にも感じられない様相を呈
している。
「おばあちゃんの料理」を大切にしない現在の風潮は、日本の自然条件を省みる余裕
もなく、そこに培われた日本人の体形に合う筈の料理をも無視している。この状態を
持続していると将来の日本人はどうなるか、その答えは日系アメリカ人3世を見れば
歴然としている。
 即ち日本人の胃腸をはじめ内臓の構造は、簡単に西洋人にはなれないのである。1
〜2世の人達はアメリカに移っても日本食を食べていた。しかし、3世になると完全
に西洋人と同じ食生活を摂る。結果は高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病罹患
率が非常に高い。この事実を直視していないのが現状である。

◆低カロリー、低塩分摂取で大丈夫か◆
 戦後の日本人は栄養失調に陥っていた。そこでとられた政策は高蛋白、高エネルギ
ーの摂取であり、脂肪分など高値の華であった。現在は全くこの逆を指導しており、
人々もそれを信じて疑わない生活を続けるようになった。豊かになった証拠である。

 中庸の方針を好むはずの日本人が、今や偏重を重んじる人が多く、なぜ低カロリー
なのか、なぜ塩分の摂取を控えねばならないのか、その原因が不摂生であることを棚
に上げ、ひたすら制限食ばかり進めるやり方では問題の解決にはならず、ここで大き
く発想の転換を求めるべきであろう。
 薬膳は、古来歩んで来た人類の知恵が結集された食事である。世間でいわれるよう
な中華料理に生薬(しょうやく)を加えただけのものではない。有難いことに現代栄
養学も、最近その考えに近づきつつあり、食品の効能を深く表示するようになってき
た。

 我が全日本薬膳食医情報協会はフードファディズムの集団ではない。わが国で育っ
た伝統食を基本に、中国の伝統思想、西洋の栄養学とそれぞれの優れたものを日々の
生活に活かし、それを少しでも多くの方々にお伝えして行きたい。それだけの気持ち
でこのたび“Any食医情報協会”を発足した。
 このようなお考えにご賛同頂ける方が、一人でも多く知り合えることを願って止ま
ない。

◆Food Faddism(フードファディズム)◆
 薬膳を勉強していると、ともすれば陥り易いのがこの「フードファディズム」であ
る。
 この横文字は、最近の生活運動者などに時折見受けられる一種の健康食信奉者にあ
てはまる言葉であろう。Food はおなじみの食物、Faddismは“Fad”「一時の流行」
とか、「のめりこむ」と云った意味になる。
 薬害という言葉がマスコミ等で騒がれて久しいが、事実、国民の目は確実に「薬」
から遠ざかる機運にある。それが証拠に製薬業界の利益は下る一方である。そこで考
えた手は「食品業界」に参入することであるが、食品製造業では利益が薄く、薬と食
の中間を狙った「健康食品」に力を注いだ。これが見事に成功し、今日のサプリメン
ト崇拝者を作り出したわけである。実に見事な戦略である。
 次の戦略は食品の恐ろしさを宣伝することである。農薬公害問題、自然栽培の有利
性、これらは真実であるが、人々に恐怖感を抱かせ、これがきっかけになり、消費者
運動の人々の活動に火がついた。
 無農薬、有機栽培、これらの作物を頂くことで、家族の健康も安心。即ち「フード
ファディズム」を植えつけるきっかけ作りとなった。
 この理論は決して悪いとは云わない。しかし、この狭い日本の国土で無農薬栽培は
非常に困難である。すでに何十年もかけて地球を汚してきたのである。5年や10年
で回復する道理はない。
 解決策は矢張り「薬膳」である。薬膳には体内に蓄積されている有害物質を排出す
る力を備えた食品があることを説いている。例えば小豆であり、ハトムギ等がそうで
ある。その他にも多くの食品がある。こうした理論が存在することを、世間の人々は
もっと謙虚に耳を傾けて頂きたい。

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理事長 岡本清孝

All Nippon Yakuzen Association